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三日月に腰掛けている作家。
ある夜倉庫のかげで聞いた話
 「お月様が出ているね」
 「あいつはブリキ製です」
 「なに、ブリキ製だって?」
 「ええどうせ旦那 ニッケルメッキですよ」(自分が聞いたのはこれだけ)
             「一千一秒物語」より
 
これは、私の好きな作家、稲垣足穂さんの「一千一秒物語」の一話です。収録されている70話の中で、一番好きなお話です。
この作品は、足穂さんが十九歳の時、大正八年に書かれたものだそうで、私は、初めてこの作品を読んだ中学生の時、大正時代にこんなに素敵な言葉を紡ぐ人がいた事に、深く感動してしまいました。
この作品の中には、他にも、お月様がけんかをした話、星でパンをこしらえた話、月光密造者などと、天体にちなんだお話が入っています。刊行された当時の文壇では、かなり奇想天外な作品に思われたのではないのでしょうか。
 
足穂さんの世界を、一つの言葉で言い表すのは、とても難しいことのように思われます。
感応の世界。音の無い世界。
足穂さんがつくりあげた濃密な空間に、一旦足を踏み入れると、何とも心地良く、全てのものが澄み渡ったこの世界から抜け出る事は、不可能とすら思われてしまいます。
足穂さんの世界では、実世界では垣間見る事のできないゆったりとした空気、夜空に紡がれ、人間と接する事のできる天体たちが、時空を隔てて存在しているのです。

一千一秒物語
著者:稲垣足穂 /たむらしげる
出版社:ブッキング

一千一秒物語
たむらしげるさんも、以前から大好きなイラストレーターさんの一人です。
たむらさんの絵は、足穂さんの世界に、本当にしっくりと馴染みます。

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【2005/12/01 21:05】 | 本のお話。 | トラックバック(0) | コメント(0) |
アガスティアの葉
昨日、古本屋さんで、青山圭秀さんの「真実のサイババ」を発見しました。以前、この方の「理性のゆらぎ」、「アガスティアの葉」を読んだ事があったのですが、他にも著書がある事を知らなかったので、とても嬉しく思って、早速読み始めているところです。以前の二冊もそうだったのですが、面白いです。科学では証明できないけれど、存在するもの。そういったものを、この作家さんは、肯定する立場からではなく、厳しい疑いの目を持って、自ら体験して、それを解りやすく伝えてくれます。
前述にもある、アガスティアの葉。これは、5000年前に南インドの聖者アガスティアによって、ヤシの葉に書かれた預言書だといいます。この世に生まれてきた全ての人々の情報が、そこに書かれているそうです。家族構成とか、寿命を含む運命、そういった全情報が、記されているといいます。この「アガスティアの葉」の存在を知った時、訪れたこともないインドの地に、自分の個人情報が眠っている、それはとても不思議で、素敵な事だなぁと思いました。実際、私は心の奥底から、このアガスティアの葉の話を信用しているとは言えないのですが、でも、この葉に関するこういった話自体が、物語的に思えるし、本当だったら良いなぁって。いつかインドに行く機会があったら、ぜひこの葉を読みに立ち寄りたいと、そう思うのです。ではでは、実は、今も本の続きが気になって仕方がないのです。


アガスティアの葉
著者:青山圭秀
出版社:幻冬舎


アガスティアの葉



【2005/11/14 19:42】 | 本のお話。 | トラックバック(0) | コメント(0) |
本を読む事。
好きな事の一つです。毎日必ず何かしらの本を読みます。毎晩お布団の中で、いつもより少し難しい本を読みながら眠りにいざなわれる、そんな時間がとても心地良いのです。いろいろな作家さんのものを読みますが、特に稲垣足穂さん、梶井基次郎さん、尾崎翠さん、最近の方ではクラフト・エヴィング商會さん、そして海外では、スティーヴン・ミルハウザーさん、イタロ・カルヴィーノさんなどの作品がとても好きです。両親が読書好きで、小さい頃からいろいろな本が家にあった事が、私の読書歴の始まりです。飽きっぽい私がこう長い間にわたって本を読み続けているというのは、何だか不思議な感じがします。
数年前までは、本は新刊で買う事が多かったのですが、最近は、ほとんど古本屋さんで購入しています。読み終わったあと、後ろのページに以前の所有者がしるしたであろう日付などを発見すると、嬉しくなってしまいます。その日付が古ければ古い程、このたった一冊の本が経てきた歴史を思い描き、わくわくしてしまうのです。
【2005/11/11 20:10】 | 本のお話。 | トラックバック(0) | コメント(1) |
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ふと思った事、感じた事を、きまぐれに綴っていきます。どこか共鳴するところがあってくれるのならばいいなぁと・・・

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おすすめ本。

私がこの一ヶ月で読んだ、面白かった本をご紹介します。

真実のサイババ 青山 圭秀 ・ことばを読む 井上 ひさし ・クリスマス・ボックス リチャード・P・エヴァンズ

おすすめ映画。

ストレンジ・ワールド 4作の短編映画集です。ロバート・カーライル主演の「置き去られた空間」が印象的です。 ・ぼくの伯父さん ゆったりとした空気が流れる、ジャック・タチの映画です。この映画に使われている曲、たまに無性に聴きたくなります。 ・フェアリー・テイル 3話のオムニバスで、カトリーヌ・ドヌーブ、ミュウミュウも出ているのですが、エマニュエル・ベアールの「赤ずきん」。この作品の映像、エマニュエル・ベアールの可愛らしさが、私にはとても衝撃的でした。

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